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金融サービスを転換させるデータ ストリーミングの6つの方法
2022.09.12 Confluent翻訳記事

はじめに

金融サービス (FinServ) 企業が市場シェア獲得に向けて熾烈な競争を繰り広げていることは、何も驚くことではありません。とりわけ、FinServ 業界の市場規模は、2025 年までに 28.5 兆ドル (2021 年の 22.5 兆ドルから増加) に達すると予想されています。しかし、莫大な利益が得られる可能性があるだけに、収益性が高いニッチ分野を生み出そうとする競合他社に先手を打つというのは、避けられない課題です。では、FinServ 企業がビジネス戦略を強化し、業界のライバル企業に対して強力な優位性を確立するためには、どのようなソリューションを自由に使いこなせなければいいのでしょうか?

その答えは、現代のテクノロジードリブンな市場でよく見られるように、デジタルの領域にあると言えます。FinServ 企業の大多数は、自社のビジネス モデルを強化するために、膨大な量のデータを利用しています。これらの企業は、データから価値を速やかに引き出すことで、よりパーソナライズされたカスタマー エクスペリエンス、より正確な市場予測、不正行為の予測分析など、大きなメリットを得ることができます。しかし、この活動によって生成されるデータの量が増加し続けるにつれ、レガシーなデータ システムでの対応は困難になり、最新のデータ プラットフォームとアーキテクチャによる新たなパラダイムが生まれつつあります。さらに、FinServ の規制当局は、ガバナンス、監査適合性、透明性に関して高度な目標を設定し続けているため、この業界の企業にとっては複雑な技術的課題となっています。その結果、多くの FinServ 企業は、データ ストリーミング プラットフォームとイベントドリブン アーキテクチャを利用して、価値を高めて、市場での足がかりが得られる多様で斬新なユース ケースに対して、リアルタイムにデータを処理し、アクセスできるようになります。

イベントドリブン アーキテクチャとデータ ストリーミング プラットフォームが、より迅速で革新的なソフトウェア開発を可能にし、金融サービスをどのように変革させているかは引き続きお読みください。世界最大の銀行、決済処理業者、フィンテック企業が、Confluent Cloud を利用して、Apache Kafka を活用し、顧客サポート、社内業務の効率化、本番環境でデータプライバシーに関する規制要件をどのように満たしているかをご紹介します。

FinServ 企業が、次のようなテクノロジーを採用することで、どのように利益が得られるかご覧いただけます。

  • アプリケーションのパーソナライゼーションによる顧客の把握 (KYC)
  • リアルタイムの分析と不正行為の検出
  • サイバーセキュリティと規制順守
  • 取引プラットフォームとサービスとしての市場データ
  • 顧客の追跡、アラート、通知
  • その他多数

以降では、データ ストリーミングが影響をおよぼしている FinServ の 6 つの主要分野を紹介していきます。

1.消費者向け銀行業にチャンスをもたらすデータ ストリーミング プラットフォーム

消費者向け銀行業には、当座 / 普通預金、住宅ローン、クレジットカード部門を持つ世界最大級の金融機関に加え、チャレンジャー バンクや FinTech サービス企業も含まれます。従来の銀行では、単一のプラットフォームですべての顧客を管理する際に、スケーラビリティとセキュリティ面で多くの問題が発生していました。Apache Kafka アーキテクチャを採用することで、これらの問題の一部が軽減され、クラウドネイティブ化を支援します。

オンライン口座管理、ローン申請、不正行為防止スキャン、信用報告書分析、仲買業務、会計処理、リスクマネジメント、ストレス テスト、および履歴レポートなどは、すべて消費者向け銀行業を営む企業がソフトウェア開発を積極的に行っている分野の一例です。

チャレンジャー バンクには、従来の消費者向け銀行グループでよく見られる伝統的なインフラストラクチャや物理的な事業運営形態があまり見られません。むしろ、これらのビジネスでは、ユーザーフレンドリーなモバイル アプリケーションや Web サイトを介して消費者向けバンキング サービスを提供する新しいソフトウェアの構築に注力しています。使いやすさとアクセシビリティに重点を置くことで、チャレンジャー バンクは、既存の業界リーダーから市場シェアを奪うことができるのです。

フィンテック 企業は、暗号通貨や分散型台帳ブロック チェーン ソリューションを含む、消費者向け銀行業用のプラットフォームを開発しています。また、フィンテック 企業は、オンライン決済、イールド ファーミング、デリバティブ取引プラットフォームでも革新的な取り組みをしています。ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨は、従来からある金融サービスの型を破り、NFT プラットフォームを使用した新技術形態の台頭をもたらしました。消費者向け銀行、スタートアップ、フィンテック 企業には、Confluent Cloud を活用して効率化できるカスタム ソフトウェア開発の共通要件があります。

Confluent Cloud などのリアルタイム データ ストリーミング プラットフォームは、Apache Kafka ストリーミング アーキテクチャを活用して、消費者向け銀行のデータ処理や利用方法をモダン化します。Confluent Cloud を使用すると、Kafka を活用してエンタープライズグレードの体験を実現し、ITチームがリアルタイム ストリームとしてデータに簡単にアクセスし、データ サイロを統合して、レガシー データを解放できるようになります。Apache Kafka をベースにして Confluent Cloud で最適化されたデータ ストリーミング アーキテクチャを採用することで、消費者向け銀行は、次のような革新的なアプリケーションを構築できます。

  • 最先端の IT インフラストラクチャ
  • 包括的なセキュリティ制御
  • 高度な不正行為防止システム
  • 即時決済ソリューション
  • 個人データとID情報の責任ある管理
  • その他多数

2.Confluent Cloud がシームレスな決済体験の提供を支援

オンラインで行われたデジタル決済の規模は、2021 年に 6.75兆ドルで、2027 年までには 12.55 兆ドルに達すると予想されています。個々の顧客、ビジネス プロバイダー、製品、および関連するプラットフォームのアクティビティに関するイベント データを Apache Kafka で集約し、e コマース分析、不正行為防止スキャン、ビジネス インテリジェンス、出荷、およびロジスティックスに利用できます。Confluent は、Bank of America の第 11 回年次テクノロジー イノベーション サミットにおいて、Apache Kafka を活用したFinServ 企業で、強烈なインパクトのあるユース ケースを構築した、として最優秀賞を受賞しました。

Confluent Cloud は、e コマースや B2B ネットワークのオンライン決済アプリケーションで必要となるレベルの、きめ細かなデータの収集をサポートするように拡張できます。また、開発者は、プラットフォーム アクティビティの自動化のためにイベント データにアクセスし、各ユーザー アカウントに応じたパーソナル化を可能にするマイクロサービスを用いて、アプリケーションを構築することもできます。これで、FinServ 企業は、個々の顧客向けにより優れ、よりカスタマイズされたサービスを提供できるようになります。

決済代行事業者が、Confluent Cloud のフル マネージド プラットフォームを利用して得られるメリットは次のとおりです。

  • 最適化されたデータをデータ レイクにフィードする機能
  • Apache Kafka の共通テクノロジーを用いて通信を行うマイクロサービスを構築することで、実現できるアプリケーション スタックのモダン化
  • 情報を ML(機械学習) 処理するためのデータ パイプラインの開発
  • 不正行為防止、ネットワーク分析、監視、リアルタイム メトリクス
  • 金融業界の規制順守に必要な最適なツール
  • サイバーセキュリティとクラウド ガバナンスに最適なツール
  • オンライン決済代行事業者が、ユーザー トラフィックのあらゆるレベルや変動に対して確実に対応できる能力

3.リアルタイム データが不正行為防止を促進

世界的な大企業の多くは、不正行為防止の基盤環境として、Apache Kafka アーキテクチャをすでに採用しており、プラットフォーム間でリアルタイム データを共有する脅威監視用の内部フュージョン センターを開発しています。また、Apache Kafka がプラットフォーム アクティビティから収集したイベント データは、e コマース セキュリティへのアプローチの自動化、ローン承認に関するリアルタイムな決定、これまでのユーザー データの分析、リスクマネジメントポリシーの最適化、などに使用されています。

機械学習 (ML) を使用したデータのバッチ処理機能は、API やキューを用いたクラウド ハードウェアへのカスタム データ パイプラインによって実行されます。データ レイクを使用することで、フュージョン センターでは、さまざまなドメイン、ブランド、プラットフォームからの情報を、統計分析用の共通ソースにプールできます。Kafka によるトピックへのデータのグループ化により、データの処理と保存が高速化され、ML 解釈と AI モデリングによるリアルタイムなネットワーク監視が可能になります。そのため、Confluent コネクターとストリーム処理を組み合わせることで、さまざまなソースのデータの調達、ルーティング、クリーニング、検証を行い、ML トレーニング データ セットに正しいデータをフィードできます。

これらの Kafka トピックは、マイクロサービスで、データを利用できるようになります。これによって、モダンでスケーラブルなアプリケーションを構築できるようにします。これで、ネットワーク アクティビティのさまざまな側面をリアルタイムに捉えるチャート、分析、アラート、およびグラフを備えたフュージョン センターでの表示用として、カスタム ソフトウェアを構築する能力が利用できるようになります。フュージョン センターのネットワーク管理者は、データドリブンなロジックに基づいて脅威への対応を自動化し、ドメイン全体で企業のセキュリティ ポリシーを適用できます。

4.データ ストリーミングで複雑な資本市場をさらに深く理解する

投資金融部門のある消費者向け銀行には、国際資本市場における株式、債券、その他有価証券の取引に関する複雑な IT 要件と規制があります。人工知能と機械学習による複雑な市場活動のシミュレーションのモデリングは、金融グループにおけるリスク マネジメントと取引戦略の進化につながっています。

データ ストリーミング アーキテクチャは、次のような分野で取引市場を変革しています。

  • ポートフォリオの評価
  • 限度額に対するエクスポージャーの計算
  • 活動全体でのヒット率やフィル率など重要な比率の比較
  • ラウンドトリップ時間の監視
  • 担保の最適化
  • マージンの管理
  • リスク チームのためのガードレールの確立

Apache Kafka が提供し、Confluent Cloud が最適化するイベントドリブン アーキテクチャは、厳しい銀行規制下におかれた複雑な金融機関の株式、債券、投資を監視する内部分析の開発に最適です。ヘッジ ファンドやプライベート エクイティ グループは、定量取引、市場活動の履歴シミュレーション、高頻度取引ソフトウェアの開発に Kafka を使用しています。

暗号通貨取引プラットフォームを含む仲介サービスを顧客に提供する金融機関は、Kafka と Confluent Cloud を使用して、取引後の処理、決済、清算に関連するリアルタイム情報を提供するアプリケーションを構築できます。これらの取引アプリケーションは、リアルタイム データと極めて低いレイテンシーを前提としており、購入が 1 秒位内に行われた場合でも、正確に口座残高に表示されます。さらに、Confluent Cloud では、データ パイプラインとデータ レイクにセキュリティ ポリシーを適用するため、開発者は自社の事業分野の規制要件に準拠しながら、これらの取引アプリケーションを構築できます。

統合型取引エコシステム : 変化を続けるデータを使用する統合型取引エコシステムを構築する方法をご紹介いたします。コネクターがシステムを同期する方法やストリーミング データ パイプラインの作成方法など、金融サービス業界のユース ケースを網羅した無料のホワイト ペーパーがダウンロードいただけます。

ユーロネクスト証券取引所は、イベントドリブン型取引プラットフォーム Optiq の基盤として Confluent Platform を選択しました。このプラットフォームは、キャパシティを 10 倍に増強し、ラウンドトリップ取引や市場データの平均パフォーマンス レイテンシーで、15 マイクロ秒を実現しています。同社は、アムステルダム、ブリュッセル、リスボン、パリ、アイルランド、英国で規制対象の証券およびデリバティブの取引市場を運営しています。Confluent は、このプロジェクトの開発において、専門サポートを提供しました。

5.リスクマネジメントに改革をもたらすリアルタイム データ処理

金融保険業界の企業がリスクマネジメント評価を実施する際に使用するモデリング ツールは、低レイテンシーのリアルタイム データを使用して最適化されます。IoT デバイスからタイムスタンプ付きのデータを大量に受信できるため、気象、地震、潮の干満、衛星センサーを監視でき、クラウド ソフトウェアで処理可能な上に、調査研究グループが使用可能なデータが得られます。

ャート、アラート、メトリクスを使用してこのデータを集約するカスタム分析を構築することで、企業はデータ ストリームの表示を制御して、情報を実用的なものにできます。同じ技術は、他産業の自動運転車のナビゲーション、海運、物流、供給レベルの追跡などのセンサーでも使われています。データサイロを破壊し、イベント ストリームからのデータを処理することで、統計的手法や ML 分析を用いてリアルタイムのリスクをモデル化し、大半の業界の要件に対応することができます。

Confluent Cloud には、Identity API と Risk Engine が備わっており、エンタープライズ ソフトウェア開発における一般的なリスクマネジメントソリューションを容易に実装できます。Identity API は、ネットワーク接続時のユーザー認証、トークン管理、およびセキュリティ認証を自動化します。Risk Engine は、データ ストリームを分析し、必要に応じてセキュリティ ポリシーを適用するためにトリガー レスポンスを実装します。Confluent コネクターは、レガシー ソフトウェアへの橋渡しとなります。

Tesco などの企業は、小売業のリスク マネジメントにこれらのソリューションを使用しています。実際の取引市場にリスクマネジメント戦略を適用するには、Databricks データ レイク統合を用いた ksqlDB 上、または AWS、GCP、Azure などのクラウド サービス プロバイダーを使用して構築できます。

6.保険業界のイノベーションにつながるデータドリブンなインサイト

保険会社は、デジタル トランスフォーメーションを進めて、さらにデータドリブンになろうとしています。これには、中央処理、リスクマネジメント、AI シミュレーションを実現するための統合型データ レイクを用いて、個々の業務部門を管理する Confluent Cloud などのクラウドネイティブなソフトウェア ソリューションの採用が含まれています。顧客の口座管理、自動支払、会計処理、請求は、リスク モデリング、ストレス テスト、財務分析、資産管理から分離されています。データ ストリーミング アーキテクチャにより、保険会社はデータ サイロを解消し、データ パイプラインを活用してインサイトが得られるようになります。

今では、契約査定チームは、機械学習とデータの統計分析を使用して、リスク算定時のさまざまな財務変数を考慮できるようになっています。保険会社によっては、プラットフォーム詐欺や顧客からのクレーム拡大に対処するために、銀行業界と同様の手法を使用しているところもあります。また、生産、供給、および安全をリアルタイムに監視できるよう IoT デバイスを採用している企業もあります。

保険グループが Confluent Cloud と Apache Kafka アーキテクチャを採用して、業務に革新的なソリューションを構築した実例については、Generali Switzerland のケース スタディをご覧ください。Humana の実例からは、医療保険事業者がデータ ストリーミングを利用して相互運用性を向上させることで、どのようなメリットを得られるかが分かります。また、Confluent ではこのテーマに関して、次の 2 つのebookをダウンロードしていただけます。

金融サービスのケーススタディ : そこにある無数のチャンス

ますます加速するデジタル市場の要求に応えるために、FinServ 企業がどのように進化しているかについては、次のリソースをぜひご覧ください。この業界の開発者が Apache Kafka と Confluent を用いて、インパクトのあるさまざまなユース ケースへのアプローチをどのように変革したのか紹介しています。

データ ストリーミングが FinServ のイノベーションをどのように導いているのかについての詳細は、無料のホワイトペーパー「Confluentが金融企業の変革を促進する 10 の方法」をダウンロードしていただくか、Confluent Cloudに関するセミナー、記事、ポッドキャストをご覧ください。

原文:6 Ways Data Streaming is Transforming Financial Services
著者:Dan Juengst

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