API は、ソフトウェア システムやサービスがデータを通信および交換する方法の基盤として機能します。しかし、管理されておらずセキュアでない API は、適切なガバナンスがなければ、悲惨なセキュリティ侵害やデータ漏洩につながる大規模な脆弱性を引き起こす可能性があります。
API 関連の攻撃が増加し、それが 2030 年までに 996% 増加すると言われている中、アンマネージド API は非常に現実的なセキュリティ上の脅威となっています。イノベーションを停滞させたり、コストを高騰させたりすることなく、信頼性の高い API セキュリティを実装するにはどうすればよいでしょうか ?
その答えは、『標準化』にあります。この記事では、API のセキュリティとガバナンスに対して標準化されたアプローチを採用することで、組織がリスクを軽減し、市場投入までの時間を短縮し、コストを削減するのにどのように役立つかについて説明します。
API の標準化とは ?
API の標準化には、API の設計、開発、使用における一貫性、相互運用性、信頼性を確保することを目的としたガイドラインの作成 (および順守) が含まれています。
API を標準化すると、開発者、アプリケーション、システムが従うことになる共通のフレームワークを作成できます。これにより、API 開発の品質レベルと信頼性が向上します。
API 標準化によるその他のメリットには、複雑さの軽減、導入やスケーラビリティの容易さの向上、さらに (もちろん) セキュリティの向上があります。
標準化された API ガバナンスが重要な理由
API ガバナンスには、API のライフサイクル全体を通して監視するためのプロセスとポリシーが含まれています。これには、適切な認証、認可、監査ログ、レート制限、その他の形式のアクセス制御の確立が含まれます。
効果的なガバナンスを導入すると、企業は環境全体で使用されているすべての API を追跡し、セキュリティ ポリシーを設定して適用し、不審なアクティビティを監視して、API の使用方法を最適化できます。このアプローチを標準化することで、個々のチームやシステムで断片化されがちな取り組みを統合するのに役立ちます。
API の脆弱性に潜む一般的な根本原因
API セキュリティ ギャップの原因としてよく見られる重要な要素はいくつかあります。
- 急速な変化のペース — API 環境はめまぐるしく変化し、チームが機能をリリースし、内部 / 外部システムと統合するにつれて、新しいインターフェイスが常に追加されます。そのため、API ガバナンスを追跡することが困難になります。
- 複雑さ — 最新のアーキテクチャは複雑で、さまざまなサービスやエンドポイントが多数存在します。マイクロサービスは、スプロールを悪化させます。
- 可視性の欠如 — IT 部門では、使用されているすべての API と、それらがどのように保護されているか (または保護されていないか) についての可視性を欠いていることがよくあります。
- パッチが未適用 — オペレーティング システムやアプリと同様に、API にも脆弱性を修正するために定期的なパッチ適用とアップグレードが必要です。これらを無視すると、リスクが継続して存在したままになります。
- ユーザーエラー — 古くからあるお決まりの古典的なセキュリティ ギャップ。それがユーザーのエラーです。実装時の設定ミスや見落としにより、意図せずセキュリティ ホールが発生する可能性があります。
- 自己満足 — API は内部ニーズに応えるものであるため、組織はその公開範囲を過小評価しがちです。ガバナンスに関するデュー デリジェンスの欠如により、リスクが増大します。
- レガシー アーキテクチャ — 攻撃対象領域が大きいモノリシック アプリケーションではリスクがより大きくなるため、モダン化が必要です。
- ID 認証の複雑さ — 内部および外部のユーザー アクセス、SSO、および堅牢な認証をうやむやにすると、攻撃者が悪用するギャップが生じます。
これらの課題 (およびその他の課題) により、適切な保護が行われないまま API が展開されることになります。このまま API が公開されると、データ侵害、コンプライアンスの不履行、サービスの低下し顧客が憤慨に至るまで、深刻な結果を生みかねません。
API ガバナンスの標準化によるセキュリティ上のメリット
API ガバナンスを標準化すると、セキュリティ上多くのメリットが生まれます。API ガバナンスの標準化は、セキュリティ プロトコル (認証、認可、暗号化など) の一貫した適用を確実に行うことで、脆弱性を軽減し、その結果、侵害のリスクが軽減します。
また、標準化プロセスでは定期的なセキュリティ監査、脅威の評価、脆弱性テストが求められるため、組織は潜在的なリスクを他の方法よりも早く検出して軽減できる可能性が高くなります。
データ保護、アクセス制御、セキュアなコーディングのベスト プラクティスに関連するセキュリティ ガイドラインを明確に定めることで、API ガバナンスの標準化では、強固なセキュリティ基盤が構築され、セキュリティの脅威に対する API エコシステムのレジリエンス (耐障害性) が向上します。
API ガバナンスの標準化によるその他のメリット
標準化のメリットはセキュリティにとどまらず、開発者エクスペリエンスの向上、優れたユーザー エクスペリエンス、時間とコストの削減など、その他のメリットも実現します。
開発者エクスペリエンスの向上
API のセキュリティとガバナンスを標準化すると、以下のような重要な部分で開発が簡素化されます。
- 冗長性の排除 — 開発者はプロジェクト / API ごとにギアを作り直す必要がありません。共通のプロトコル、プラグイン、認証などは一度定義すればよいだけです。
- 再利用の促進 — 開発者は、ゼロからコーディングするのではなく、確立された標準やガバナンス / セキュリティ コードの共有ライブラリをベースに構築できます。
- 迅速なオンボーディング — 標準が明確に文書化されていれば、新しい開発者はより早く育ち、実践活動に参加できるようになります。オーダーメイドの実装を学ぶ必要はありません。
- 要件の明確化 — 標準では、API のタイプやユース ケースごとに、どのセキュリティ対策が必須であるかについての明確なガイダンスが示されています。これにより曖昧さが解消されます。
- 中核の業務に集中 – 標準で面倒な作業を処理するため、開発者はカスタマイズされたセキュリティ制御の実装に煩わされなくなります。
- コラボレーションの推進 —チーム メンバーは、協力して API を構築する際、共有のフレームワークとポリシーで足並みが揃います。
- プラットフォームの適用 — セキュリティ遵守の大半は、手動レビューと比較して、Kong などのゲートウェイによって自動的に実施できます。
全体的に見ると、標準化により、開発者は実証済みのブループリント、ツール、ガードレールが手に入り、API 開発へのセキュリティの組み込みをより体系的な アドホックではない) プロセスにすることができます。そして開発作業の効率化と明確化が実現します。その後、自動化により、多くの API にわたってこれが効率的にスケーリングしていきます。
時間の短縮とコスト削減
API のセキュリティとガバナンスを標準化することで、コストを削減し、市場投入までの時間を短縮できる主な方法をいくつかご紹介します。
コストの削減
- 標準化されたセキュリティ機能によって冗長な開発作業が不要になります。
- アドホックなセキュリティに比べて、システム化されたプロセスにより、運用コストと人件費を削減できます。
- Kong などのツールやプラットフォームを統合し、スケールメリットを実現します。
- 標準ポリシーの実施が自動化されるため、手作業が軽減されます。
- システム間の統合や相互運用が容易になります。
- ゼロから構築する場合に比較して、共有のセキュリティ ライブラリやプロトコルを活用します。
市場投入までの時間を短縮
- API ごとにカスタム セキュリティ制御を開発する必要がなくなります。
- 標準化されたフレームワークにより、新規開発者のオンボーディングが迅速に行えます。
- チーム間のコラボレーションと連携を促進します。
- ガバナンスの自動化により、コンプライアンスと新しい API のリリースが迅速化されます。
- API 全体にわたる変更管理が迅速に行えます。
- 新しい機能やエンドポイントは、既存の標準に基づいて構築できます。
- 再利用を促進し、開発ライフサイクルを加速できます。
全体として、標準化と自動化により、効率性、透明性、スケールメリットが実現します。これが、コストの削減と、新しい API や製品をセキュアな方法でより迅速に市場投入できる直接的な要因となります。
ユーザー エクスペリエンスの向上
API のセキュリティとガバナンスを標準化すると、次のような重要な部分でエンドユーザー エクスペリエンスも向上させることができます。
- 信頼性の向上 — 一貫したセキュリティにより、アプリやサービスは、ユーザーの混乱を引き起こす障害や侵害に対する脆弱性が軽減されます。
- パフォーマンスの向上 — 標準化されたプロトコルは、アドホックなソリューションに比べて速度と効率が最適化されています。
- スケーラビリティの促進 — 標準化により、セキュリティのボトルネックを生むことなくアプリを迅速に拡張できます。
- 統合の簡素化 — 共通した標準により、ユーザーの観点からアプリとサービス間のシームレスな統合が可能になります。
- ユーザビリティの向上 — 標準により、シングル サインオンや統合 ID 管理が可能になります。
- フリクションの低減 — 標準認証により、冗長なログイン プロンプトや複雑さが解消されます。
- 信頼の構築 — 標準がアプリケーション全体に一貫して適用されることで、ユーザーはより安心感が得られます。
- イノベーションの促進 — 開発者がセキュリティ標準に費やす時間は、ユーザー重視の機能のためにより多くの時間を費やしていることになります。
- ユーザー エクスペリエンスの優先 — 開発者のリソースは、セキュリティの仕組みではなく、コアとなるユーザー機能に割くことができます。
- パーソナライゼーションの実現 — コンテキストベースの標準により、ユーザー エクスペリエンスをきめ細かくカスタマイズできます。
標準化されたコンポーネントを活用することで、開発者は最適化とイノベーションに集中し、エンドツーエンドのユーザー エクスペリエンスを向上させることができます。セキュリティはボトルネックではなく成功要因になります。結果はどうでしょうか ? アプリはより堅牢で使いやすく、ユーザーに合わせてカスタマイズされます。
つまり、API ガバナンスにより、組織はセキュリティ リスクと技術的負債を最小限に抑えながら、API のビジネス上のメリットを最大化できることになります。しかし、多くの場合、企業は断片的な方法でガバナンスに取り組み、ポリシーは環境やチームによって大きく異なります。これにより、悪意を持った攻撃者が悪用するギャップが生じるのです。
だからこそ、標準化された API ガバナンスを導入することが重要なのです。標準化された API ガバナンスが、包括的なセキュリティと組織全体にわたるスケーラブルな監視を実現します。
API ガバナンスとセキュリティの成熟度を高める道のり
API ガバナンスを標準化する際には、基本原則とベスト プラクティスに従うことで成功を確実にすることができます。
API ガバナンスを成功させるための 5 つの重要な原則
これらの原則を遵守することで、組織全体でセキュリティ、生産性、導入のバランスが取れた効果的な API ガバナンスを確立することができます。
- 洗い出しからはじめる — 最初のステップは、組織全体で使用されているすべての API、その接続先と所有者、そして現在のセキュリティ レベルを洗い出すことです。インベントリを作成することで、それを可視化できます。
- 反復型アプローチを採り入れる — ガバナンス機能は、時間をかけて段階的にロールアウトすべきです。小さな成功を積み重ねて、最終的なビジョンに向けて構築を進めましょう。
- セルフサービスを可能にする — 開発者が API 開発中にボトルネックなしで、標準化された方法でガバナンス ポリシーを簡単に実施できるようにします。
- デフォルトが安全に — 特定のビジネス上の理由で明示的に除外されない限り、API は認証、SSL、レート制限などをデフォルトで使用します。
- 継続的な監視 — API アクティビティの監視、異常の検出、設定ミスの特定、ポリシー違反時のアラートを行うツールを活用します。
API ガバナンスとセキュリティの成熟度を高める 3 つのステップ
API ガバナンスとセキュリティの成熟度を高めるために、組織が取るべき 3 つの重要なステップをご紹介します。
- 一元管理体制の構築 — API をセキュアにかつ一貫して管理するために、断片化した取り組みを一元管理体制に統合します。現在の体制とプロセスを監査し、ギャップを特定します。
- 保護の標準化 — Kong Enterprise などのツールを活用して、標準化された認証、SSL、レート制限、その他の保護対策をすべての API に実装します。セキュア・バイ・デフォルト文化を推進します。
- 継続的な監視と最適化 — API アクティビティを監視して、ポリシー違反、望ましくない使用パターン、攻撃の初期兆候がないか確認します。ポリシーを定期的に調整して、セキュリティとパフォーマンスを最適化します。
このようなステップを踏むことで、API セキュリティを、個々の取り組みをアドホックに多くこなす手法から、イノベーションを可能にし、ビジネスを保護する成熟したガバナンス モデルへと変革することができます。
自動標準化を実現する方法
自動標準化を実現するには、適切な API ゲートウェイを選択することが重要です。適切な API 管理プラットフォームとは、概して、API を作成するための自身の専門ガイドを抱えるようなものです。多くのオプションには、標準的なプラクティスに従ったすぐに使用できるテンプレートやルールが組み込まれているため、開発者は簡単に利用できます。このように、適切な API ゲートウェイまたは API 管理プラットフォームにより、API を迅速に作成できるだけでなく、API をセキュアで一貫性があり、エラーのない状態に保つことができます。
フィンテックからリテール、ヘルスケア、テクノロジーに至るまで、多くの大手企業が Kong を活用して、堅牢で一貫性のある API ガバナンスを組織全体に導入しています。以下に、お客様の成功事例をいくつかご紹介いたします。
- OpenID Connect の統合を実施し、あらゆるビジネス ラインで一貫したセキュリティを維持
- アプリケーションのデプロイ サイクルが数日から数時間に短縮
- API を一元管理する「デジタル ハブ」を構築
- 煩雑な手作業によるファイアウォール設定を Kong に置き換え、ポリシーのオーケストレーションを一元管理
- 新機能のリリースを加速させながら、運用コストを削減
ファースト アブダビ銀行(First Abu Dhabi Bank)
- モバイル アプリのオンボーディング期間を 7 か月からわずか 3 か月に短縮
- コストを大幅に削減しながら市場投入までの時間を短縮
- 複数のデータ センターにわたる 200 以上の API を一貫して管理
楽天
- 70 以上の社内 API のコアセキュリティ、トラフィック制御、および可観測性に Kong を採用
- API 使用量の最適化、コストの削減、機能停止の防止
- イノベーション サイクルの加速と新しいアプリの市場投入までの時間の短縮
これらの事例では、適切な API プラットフォームを API のセキュリティ確保に適用することで、ガバナンス、システムの可視化、イノベーションの加速化、そして最終的なコスト削減を目に見えて改善できていることがおわかりいただけると思います。
まとめ
API は現在、組織内や外部のパートナーとの両方で、モダン アプリケーションとサービスを統合する結合組織として機能しています。ただし、管理されず、安全ではない API を公開すると、壊滅的な侵害やシステム上のリスクにつながる可能性があります。
そこで、一元化され、一貫した API ガバナンスを実施することで、企業では大規模な保護が実現できます。Kong は、すべての API とマイクロサービスをセキュアに管理するための統合プラットフォームを提供し、環境全体を驚くほど可視化することができます。
Kong は、宣言型ポリシー定義、認証統合、きめ細かなアクセス制御、高度なトラフィック監視などの機能を備えており、組織は、重要なガバナンスを標準化しながら API リスクを防止し、イノベーションを加速できるようになります。ガバナンスに関するベスト プラクティスに従うことで、企業は API をセキュアかつ戦略的に導入できます。
API のセキュリティとガバナンスに対して、標準化されたアプローチを導入する上で Kong がどのように役立つのか、詳細については、今すぐデモンストレーションをお申し込みください。
また、無料のオンデマンド ウェビナー『API セキュリティとガバナンスの標準化アプローチによるコストの削減』をご覧いただき、標準化された API セキュリティとガバナンスに詳細まで触れてみてください。